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次の日もいつもどおりの柏木さんだった。


いつもどおりきっちりした服装。


七分丈のレモンイエローV開きサマーニットに、オレンジのステッチが入った白いデニム。


ゆるく巻いた髪は耳にかけていて、抜かりの無いメイクできっちり飾られた横顔は涼しい。


いつもどおり可愛くて、淡々として、無表情。


何を考えてるのか、全く分からん。


でも調子は良くなさそうだ。


何ていうのかな…


佐々木や緑川さんは気づいてないけど、柏木さんの口調や表情には明らかに覇気がない。


昨日の今日だから元気がないのはしょうがないけど。


飲み終わったコーヒーを片付けるため柏木さんが席を立った。


タイミングを見計らって俺も席を立ち上がる。


幸いにも緑川さんは電話応対中。


佐々木は総務の女の子と話し込んでいる。


給湯室を覗き込むと、飲み終わったコーヒーのマグカップを水で洗い流している柏木さんに声をかけた。


「柏木さん」


ニットの袖を捲くって洗い物をしていた柏木さんがびっくりしたように振り返った。


細い腕に泡が飛んでいる。





だけど俺はその泡より、柏木さんの腕に巻かれた白い包帯を見て目を開いた。