あの細い体を抱きしめたいな。
あの柔らかい胸に触れたいな。あの白くて滑らかな肌に口付けしたいな……
そんなことばっか考えてる俺ってやっぱ変態?
~♪
ふいにどこかで携帯のメロディが流れた。
きれいな音色の
“ムーンリバー”だ。
「すみません。音切るのを忘れてたみたいで…」
そう言って柏木さんが慌ててバッグの中をごそごそとまさぐった。
その間に音が途切れる。
いつもプライベート用の携帯は音を消してあるのに、彼女には珍しいミスだった。
まぁミスって程でもないか。誰だって忘れることぐらいあるし。
「いや、いいよ。“ティファニーで朝食を”?あのときのヘップバーンも綺麗だったよね」
「ええ、彼女の作品の中でも結構好きな方なんです」
「俺も♪本店に行ったけど、そのまんまだね」
俺たちの会話を聞いて佐々木と緑川さんがぽかんとしている。
何の話をしているのか分からないようだ。
二人だけの共通の話題って結構いいな♪
けど緑川さんは面白くなさそうに俺をちょっと睨むと、「何の話ですか」と会話に割り込んできた。
あれこれ説明するのも面倒だし、説明したところで彼女が興味を示すとは到底思えなかった。
俺は「古い映画の話」とだけ小さく答えた。