当然、眠りの質は悪い。
無理やり目を閉じて、布団を引き上げるも、短く、長く不定期な周期で柏木さんの言葉が度々繰り返される。
何度でも…何度でも―――
何度目かの目覚めで、俺はとうとう眠ることを諦めた。
俺は―――
やっぱり柏木さんが結婚していたという事実にショックなのだろうか……
彼女は24だし、それなりに恋愛歴があってもおかしくない。
付き合っていた人数だって気にならないぐらいなのに。
それでも“結婚”はまた別だ―――
しかも離婚しているとなると、どうしてそういう結果を選んだのか、それもまた気になる。
離婚してからも、度々柏木さんにコンタクトを取ってくる“M”
彼女はその度に苦しそうで、また怒ってもいて、そして悲しみに打ちひしがれている。
どれも俺に見せたことのない感情だ。
それほどまでに柏木さんの中の“M”の存在はでかい。
柏木さんのいいところも悪いところもMは全部知り尽くしている。
そして楽しいことも辛いことも共有し合ってきた仲だ。
俺はMに打ち勝つことができるのだろか―――
それとも最初から勝負になんかなってないのだろうか。
俺は土俵を降りるべき―――?



