Fahrenheit -華氏-


「キャ~!!」


またも女性陣の声が響き、彼女らの視線が一斉に柏木さんに集まった。


ブーケを受け止めた柏木さんは目をぱちぱちさせている。


「柏木さん!やったじゃん!!」


俺は笑いかけた。


白い薔薇のブーケを持ったまま、柏木さんは俺を見上げて困惑していた。


「…部長…つかぬことをお伺いいたします。ブーケを取ることに何の意味があるのでしょう?」


え?ええ―――!!?


知らなかったの!!


あぁ、でも…だからかぁブーケを取りに必死になっていなかったわけは。


何だかなぁ。


何でも知ってる博学の柏木さんて、時々びっくりすることを知らなかったりする。


俺は驚かせられるわけだが……そんな柏木さんも可愛いと思っちゃうわけで…





「あ、あのね。花嫁さんのブーケを取った人が次に結婚できるってジンクスがあるんだよ」





俺は苦笑いを浮かべて柏木さんを見下ろした。


柏木さんは目を細めて俺とブーケを見比べている。




「ああ…そう言うことですか。なら、これは部長に差し上げます」




そう言って柏木さんはブーケを俺の胸に突き出した。