桐島とマリちゃんはどうやら調理師学校の先輩、後輩の仲だったらしい。
調理コンテストで同じチームになったらしく、そこから親密になった。
知り合って三ヶ月で交際スタート。でも交際は一年で終わりを遂げることになる。
マリちゃんの方に好きな男ができたらしい。
相手はよく知らないけれど、話し合いの末桐島は別れることを決意。
その後5年ほど経って、偶然桐島はマリちゃんと街中で再会。
このときマリちゃんはすでに前の男との子を宿していたわけだけど、その男とは切れていた。
妊娠していることは知らずに、再会した二人は前の恋愛感情を思い出し交際を再スタート。
ところが、マリちゃんがある日異変に気づく。
妊娠したことに気づいて、計算的にも前の男の子供であることは間違いないことから、彼女の方が桐島に別れを告げた。
だけど桐島は……
「そりゃ最初は驚いたよ。マリに子供ができたって聞いて」
椅子に腰掛け、膝の上で組み合わせた指を解いたり結んだりしてもてあそんでいた桐島がゆっくりと顔を上げた。
ちょっと自嘲じみた笑みが浮かんでる。
いつも穏やかで…にこにこしてる桐島なのに……
何でだろう。
目がちっとも笑ってない。
ちっともおもしろくない、って語っていた。
「だって俺は―――子供が作れない体だから………」



