香坂さんがファイルから目を上げる。


俺も柏木さんを見た。


柏木さんは背を正し、りんとした表情で香坂さんを見ていた。


「一生に一度の晴れ姿を、と望む一方でやはり金銭的に苦しい方々も中にはいらっしゃいます。わたくしは一点ものも素敵だと思いますが、少ない予算でやりくりをしている方々にも幸せな気持ちで結婚式に望んで欲しいと思います。


結婚式って…昔も今もやっぱり女性の夢なんですよね。綺麗なドレスを着てみんなに祝福されて…。とても幸せなことだと思います。


すべての女性に夢と希望をウエディングドレスに託すことは…やはり必要なことかと思われます」



そう言った柏木さんの表情は…相変わらず無表情で……


そう推し進める顔に自信や、強気なものは見えなかった。





でもその横顔はとても綺麗だったんだ。






香坂さんもそれを見抜いたらしい。


「そうですよね。全ての女性に夢を…って。目先の利益や流行に惑わされていました。お恥ずかしい限りです」


香坂さんはちょっと恥ずかしそうに笑った。


そしてファイルをパタンと閉じる。






「では、そのようにお願いいたします」