Fahrenheit -華氏-


「人に寄るんじゃないかな。俺は全然いいけどね。


だって人間得手不得手があるじゃん。それを補い合うのが助け合いじゃない?


大体女だから料理が上手じゃないとだめ、なんてそれ誰が決めたの?


今は女性も社会進出してきてる時代だし。どっちがどうとか決められることじゃないんじゃない?」





カラカラと言って俺はまたおにぎりをガブリ。


それよか柏木さんが料理下手ってことに驚きだけど。


ちょっと人間らしくて、いいかも♪


ちょっとぐらい欠点がある方が愛らしいし。その欠点も可愛い範囲だ。


俺は料理が出来る女が好きってわけでもないしな。


そんな俺を、柏木さんは目を開いてじっと見ていた。


え…?俺、また変なこと言った…かな?


不安になっておにぎりにかぶりついたまま俺は柏木さんを見た。




「私―――そんな風に考えられる人…素敵だと思います。部長みたいな人ともっと早く出逢いたかったです」






柏木さんはちょっと目を伏せると恥ずかしそうに笑った。


へ―――!!


俺は柏木さんの言葉に思わず呆気にとられた。


口からおにぎりが落ちたけど、何とかキャッチ。


あっぶねー…落ちるところだったよ。





って、問題はそんなんじゃなーーーい!!




柏木さんが俺のこと……


す……素敵だって!!



キャ~~~!!



嬉しくて、恥ずかしくて顔から火を吹きそうっ。




「おはようございま~す♪」



能天気な佐々木の声がしても、俺はまだ柏木さんの言葉に酔って目の前がふらふらしていた。