「え?すごい?何が?」
「……料理されるんですね。それもこんなに美味しく…」
「全然すごかないよ。桐島なんて調理師免許取ってるぐらいだから。あいつに比べりゃ俺なんて…。あぁ桐島ね、調理師学校卒業してんだよ。だから外食事業部なの」
って、話がどんどんずれてる。
しかも俺!違う男のこと良く言ってどうする。
「部長が料理してるなんて意外です。外食ばっかりかと思ってました」
「外食ばっかりだと栄養が偏るじゃん。それに俺高校のときおふくろが出てったきりもう十年近くも家事全般はやってたし、別に苦じゃないよ」
「……そう、なんですか。料理上手って羨ましいぐらいです。私料理苦手ですから」
「え?」
意外だ……
「柏木さんって何でもこなせるかと思ったけど……」
事実柏木さんは男の俺も顔負けの仕事をこなす。
可愛い顔して、何でも知ってるし、何でもやりこなす。
まさにパーフェクトな人間だと思ってた。
「私だって苦手なことぐらいありますよ」
柏木さんが拗ねたようにちょっと唇を尖らせる。
でも小さくため息を吐くと、
「やっぱり……だめですよね?女として料理下手なのって」
そう呟くと、改めて俺の方に向き直った。



