Fahrenheit -華氏-


「ちょ、ちょっと熱っぽいだけで…全然平気だから…」


俺は慌てて取り繕った。


今のはまずい!!


絶対柏木さん怒るだろう。


親切心で俺の体温を測ろうとしてくれただけなのにっ。


でも柏木さんは別段不審そうな顔もしなかったし、機嫌を損ねた風でもなかった。


「そうですか。風邪なら総務部に言ってお薬を頂いてきますが」


「や!平気!!寝れば治るからっ」


ははっと不自然なほど空笑いをして、俺はその場の空気をごまかした…


…つもりだったけど、どー見てもごまかしきれてない。


佐々木が思いっきり不審顔でこっちを見てる。


「んだよ。見んじゃねぇ」


俺はちょっと声を低めると、佐々木は慌ててパソコンに向き直った。






PM6:00―――


俺は早々に日報を仕上げると、「体調悪いから」と言って帰ることを決意。


「お大事にしてください」


まだこれから一仕事していきそうな雰囲気の柏木さんは、俺の挙動不審の行動にも優しいお言葉。


相変わらず無表情だけど…


今日は早く帰って…とりあえず寝よう。


んでもってその後のことはそのときに考えよう。


思考回路がぐちゃぐちゃな俺は半分現実逃避しかかってた。


そんなとき。


~♪


俺の携帯にメール受信を報せるメロディが流れた。