Fahrenheit -華氏-


「「何それ!?初耳!!」」


裕二&綾子…息ぴったりのお前らは、もういっそ夫婦漫才でもやれ。


俺は興味深そうに身を乗り出した二人を恨みがましく見上げた。


「お前が……過去にまともな恋を!?」


あわわ、と言い出しそうな勢いで裕二が困惑した表情を浮かべた。


「天と地がひっくり返るような事実じゃない。明日は雨かも…」


「お、前らなぁ」呆れて物も言えないってこんなことを言うんだよな。


「で!?その初恋の彼女とはどこでどう知り合ってどうなったの??」


裕二が興味津々に目を輝かせて、一層身を乗り出した。


「どこでって……あれは…たぶん軽井沢の別荘だったと思う。……たぶん親父が所有してたんだろうな」


「んなこたぁどうでもいい!で、その先は!?」


「……その先っつーっても…えーと……別荘に遊びに来てた親父の友人夫婦が居て、その一人娘……?」


う゛


言ってて恥ずかしくなったぜ。


俺がまだ酸いも甘いも知り尽くす前の話だ。


あのときの俺は今の俺からは想像ができないほどピュアだった…


って…ピュアって自分で言っちゃう、俺!


「まぁそこの娘と歳が近かったから、仲良く遊んでたってわけ。そのうちにだんだん惹かれて行くようになったけど、短い夏の恋はすぐ終わった。


その家族が一家でアメリカに転移したんだよ。


それからぱったり」


親同士は仲が良さそうだったから手紙やら電話やらで連絡を取り合ってはいただろうけど、俺はそれほどそこの娘と仲が良かったわけじゃないから、ホントに音信不通……



淡い恋心を伝えようにも、その術がなく、いつしかその恋心が薄れていったってわけだ。


「…そう言うわけだから」


俺はちょっと恥ずかしくなって早口に話しを締めくくった。