Fahrenheit -華氏-


部長でいいです。


そ、それは――――


「またここに来ていいってこと?」


「そう頻繁に来られても迷惑ですけど、たまだったらいいんじゃないですか?」


迷惑…


またも俺のハートをグサッとえぐる柏木さん。


でも、これきりじゃないってことに俺は嬉しくなった。


嬉しくなって体がボーっとしてきた!


ボー……と


「……のぼせてきた」


俺は情けなくも柏木さんを見た。


柏木さんは汗一つかかずに平然としている。


体温の違いだろうか、それとも普段の習慣の違いなのだろうか。


そもそも俺はバスタブに浸かる習慣がない。


いつもシャワーオンリーだ。


まだ甘い余韻を味わっていたかったけど、正直限界。


「ごめん。俺先あがるワ」


軽く手をあげて、立ち上がろうとしたらバスタブの底で足を滑らせた。


「部長!」