Fahrenheit -華氏-


「え?クスリって……」


「クスリって言い方じゃだめですね。経口避妊薬……いわゆるピルです」


「へぇ……そんなん飲んでんの?」


俺は目をぱちぱちさせた。


「部長のように気遣ってくれる人が相手ならいいんですけど、そうじゃない人が多いじゃないですか。あたし、子供ほしくないんで」


最後の方はわざと冷たく言い捨てているように感じた。


気のせいだろうか……




柏木さんは俺の両頬に手を添えると、俺の顔を引き寄せた。


軽くキスされて、顔を離すと、


「どうします?」と子供のような無邪気な笑顔を向けてきた。






そんなの決まってる。





俺は柏木さんの首元にキスを落とすと、



「いただきます」とそっと囁いた。