Fahrenheit -華氏-


柏木さんの眉がぴくりと動いた。


わ゛~~~言わなきゃ良かった!!!


どうすんの!俺!!


どうすんの!これからっ!!


顔は何でもないように取り繕ってたけど、俺の心の中では嵐が吹き荒れている。


柏木さんはちょっと考えるように首を傾げると、






「――――いいですよ」






と小さく頷いた。


え?



えぇ―――!!



いいの!?ってかそれってどういう意味??いや、大人なんだしそれが何を意味するのか分かるだろ!!


心の中で一人ノリ突っ込みをかましている俺。


気が動転してるんだな。


よく考えりゃ俺は車だし、ちょっと「お茶でもどうぞ」ってな具合だ。


きっとそうに違いない。


変な期待を持つんじゃねぇぞ。


俺は自分にしっかりと言い聞かせた。


「家に来ても暇ですし、映画でも見ます?」


柏木さんはそんな俺の心情を知ってか知らずか、マイペースに向かいのビデオレンタルショップを指差した。