Fahrenheit -華氏-


でも俺の中にあるペースを乱されるのは決して不快なことじゃなくて、


むしろ心地よかったりする。


今まで当たり前のように女の子に接してきた事柄が、柏木さんには全部通じない。


でも柏木さんのお陰で新しいこと、楽しいこといっぱい発見できるんだ。


柏木さんは俺に新しい世界を見せてくれるようで、毎回ドキドキさせられる。




「「ごちそうさまでした」」


俺たちはきっちり手を合わせ、食事を終えた。


柏木さんは5皿、俺は8皿。しめて¥1,890(税込み)。


安っっ!!


高校生のデートみたいだ。


いや、金の問題じゃないんだけどね。





会計を済ませ、駐車場に移動する際、俺はぎこちなく聞いた。


「これからどうする?飲みだったら、近くのパーキングに車停めるけど」


「そうですね…一杯飲みたい気分ですね。部長、どこかいいお店、知ってます?」


「そうだな~この辺だと…」


と考えて、俺はふと思いついた。


ホントにふっと過ぎったって感じだな。


つまり、最初からその気はなかったってわけ。





そろりと柏木さんを窺う。


柏木さんは別段不審そうな顔をしておらず、まっすぐに俺を見上げていた。








「俺、柏木さんのマンション行ってみたいな」