Fahrenheit -華氏-


寿司かぁ……


そう来るとは思わなかったな。


女の子は大抵フレンチとかイタリアンが好きなのに。


まぁ寿司でも2、3件はいいとこ知ってるけど、そこに連れてくかぁ。


「あの…お店もちゃんと調べてあるんです」


「え?」


「連れて行ってください」


連れて行ってください。


俺は柏木さんの言葉を頭の中で巻き戻し聞いた。


柏木さんが俺にお願いしてる!そりゃもう連れてくしかないっしょ!!



俺は柏木さんを車に乗せ、柏木さんのナビ通り車を走らせた。


別に公共機関を使っても良かったのだが、会社の人間に見られたり出くわしたりしたら最悪だったから。


噂が早く広まる我が社で、俺たち二人が仲良く並んで歩いていたら何を言われるやら。


そんなこんなで車を走らせて20分。



俺は目の前の建物を見た。


家族連れや若いカップルが何組も出入りしている。







寿司屋は寿司屋だけど―――……



俺はがくりときた。







「回転寿司かよ」