Fahrenheit -華氏-


え?えぇ―――!!!


この女が俺の部署に来るっていう女!?


親父が半年かけて口説いたっていう、あの才女―――!!!





「柏木さん、こちらは外資物流事業部の神流 啓人部長です。


しばらくは彼の下で働いてもらうことになります」


人事部長はやんわり言って、俺の方を仰いだ。




柏木 瑠華は無表情に俺を見ると、すぐに頭を下げた。


「柏木です。今日からお世話になります」


丁寧にお辞儀をする様はマナー講座の見本のようだ。


「神流です。こちらこそ宜しく」


俺も慌てて頭を下げる。


「ぼ、僕は神流部長の下で働いてる佐々木です。宜しくお願い致します」


一人置いていかれたと思ったのか、佐々木は慌てて俺たちの間に割って入った。


「宜しくお願い致します」


柏木 瑠華は佐々木にまでも丁寧にお辞儀をした。





世の中なんて狭いんだ。




思わぬ美人を町中で見たと思ったら、彼女とぶつかるというハプニングがあって。


美人だと思ってたら俺の超好みで、


おまけに彼女と携帯を取り違えるというハプニングも起こった。


取り替えようとしてると、俺の部署に配属された社員だということが判明して……






さすがの俺もこの展開にはついていけない。