Fahrenheit -華氏-


「まぁそれはともかく。お前よっぽどあの二人が好きなんだな」


裕二の言ってる意味が分からなくて俺は目をキョトンとさせた。


何言い出すんだ突然。


裕二は穏やかな笑みを浮かべるとコーヒーを一口飲んだ。


「あの二人のこと信頼して、期待してたから怒ったんだろ?じゃなきゃお前がそこまで本気で怒鳴ることなんてねぇからな」


「言ってる意味がよく分かりませんが」





「だぁかぁら!お前はどーでもいい奴は何かやらかしても無視か見なかった振りだろ?それを敢えてぶつかっていくぐらいだから、お前にとってあの二人の存在は相当でかいってこったよ」





俺は目をぱちぱちさせて、裕二を見た。


確かに…裕二の言う通りだ。


何とも思わない奴に期待なんてしてないし、最初から信頼もしていない。だからミスがあっても、ああやっぱりね。で割り切れる。


時々思う……


裕二は俺なんかよりずっと俺を深く知っているんじゃないか、と。


まぁ自分自身なんて案外分からないことだらけかもな。


客観的に見て初めて気付く一面だってある。


「サンキュな。裕二。ちょっと元気出たワ」


「おー。そりゃ良かったな」


裕二は軽く笑った。俺も笑い、コーヒーを飲み終えると、店の前で二手に別れた。


さて、と。


会社に戻りますかね。