Fahrenheit -華氏-


各社に頭を下げ、謝罪をし終えて会社近くまで戻ってきたのは、もう夜の10時半を過ぎていた。


先方は俺が尋ねていっても両社とも会おうとしてくれなかった。


それでも俺は食い下がらず粘り、ようやく顔を合わせても相当頭に来ているのか口を開こうともしなかった。


ひたすら平謝りし続け、頭を下げ続けてようやく気を許してくれた。


「まぁお宅とは長い取引きだからねぇ」


「そんな風に謝れたらこちらも許すしかないでしょう」


最後は両社とも笑顔でそう言ってにこやかに俺を送り出してくれた。


良かったっちゃ、良かったけど……


問題はまだ残っている。


会社の専用駐車場に車を停めると、裕二が歩いているのを発見した。


「よ!」


俺が声を掛けると裕二はちょっと疲れた顔で振り返った。


「よぉ。お前も今帰り?」


「いんや。俺は今から社に戻るとこ」


「そっか。金曜だし一杯どうだ?って誘いたかったけど、それじゃ無理だな」


裕二は疲れた顔でちょっと笑った。


「コーヒーぐらいなら…」


俺は提案して、近くのカフェまで二人で歩いていくことになった。