「啓人……」


助手席でユカちゃんがぽつりと俺の名を呼んだ。


「ん?」


俺がユカちゃんを見る。


ユカちゃんは大きな目をちょっと潤ませて、唇をあひるのように尖らせていた。


「ねぇ今日これからどこか……」


「行こうか」俺は微笑むとユカちゃんの顔にそっと自分の顔を寄せた。


後方から苛立ったような、エンジン音が聞こえアクセルを踏む音がした。


俺が急にブレーキを踏んだからかな?


急いでいたかもしれない。右側に車線変更して青に変わると同時に俺の車を追い越すつもりだろう。


俺はどんな人間が乗ってるのかちょっと気になって、右隣をちらりと見た。






そして固まった。





柏木……さん…………?