Fahrenheit -華氏-


その雑誌の表紙に柏木さんが写っていた。


古い雑誌だから、今よりほんのちょっと若い気がしたけど。


間違いない!柏木さんだ!!


見出しに、


“今最も勢いのある物流会社『ファーレンハイト社』の若き女性社長に迫る”


なんて派手な黄色の字で書かれている。


「え……ぇえええええ!!!」


俺は雑誌を握り締め、叫び声を上げた。




―――


俺たち三人は今、床に置いた雑誌を囲んで三人座り込んでいる。


大の大人が何をしてるんだ、と聞かれたらそれまでだが。


でも…それ程までに俺たちは驚いているわけで…


表紙の中の柏木さんは、今より髪が短く色も黒色だった。


淡い色の花柄ワンピースを着ている。


こうやって見たら普通の女子大生そのものだ。


でも……相変わらず可愛い。


それに―――



「なぁ。これめちゃくちゃ可愛くない?」


「うん。今では考えられないな」


「こんな顔して笑うんだぁ…」


佐々木の言葉で、改めて実感した。



表紙の中の柏木さんは―――俺たちに決して見せたことのないこぼれるような笑顔だった―――