あの日の約束









「出しますってば。」



「ダーメ。」





――毎週の事だけど、




結城先輩はいつも

あたしの分まで払おうとする。



毎週この会話をして

毎週あたしは負ける。



それが申し訳なくて

いたたまれないのだ。





「出させて下さい。」



「聞こえなーい」




こんなに柔らかい雰囲気なのに


先輩はかなりの頑固者。





今日こそは‥



「先ぱ「もう、慣れて?」



「っ、え‥」





次の瞬間、


あたしの髪をくしゃっと

軽く指を立てて撫でて



結城先輩はふんわり笑った。




「俺、8ヶ月も坂下の彼氏やってんだから。」



「っ‥」



「毎週このやり取りするのも嫌いじゃないけどさ?」










―――あぁ‥また負けた。




しかも呆気なく戦意まで

喪失させられてしまった







「ありがとう‥ございます‥」





何故か無性に恥ずかしくて

思うように口が動かなかった






消えそうな言葉を

先輩は聞き洩らさずに






「素直でよろしいっ」




またあたしに微笑む。









――なんで、そんなに


楽しそうに笑って‥‥











何でなんですか




何であたしなんですか