結局眠れなかった。


だから時間に待ってと言ったところで相手にしてもらえる訳もない。


「また来る…か。」


ベッドに寝ころび昨夜の出来事を思い出す。


突然現れた黒猫。
しかも喋る。



私はとうとう頭がおかしくなったのだろうか?



「お嬢様、お食事の時間です。」


扉の向こうから使用人が呼ぶ。

どうやら頭は正常らしい。この声に嫌気が刺すのは正常な証拠だ。



「…すぐ行く。」



服を着替え、髪を直して外へ出る。


「おはようございます、お嬢様。」


「うん。」


「顔色が優れないようですが?」


「別に。」


どうでもいい事をペラペラ喋るものだ。


テーブルの上にはいつも通り食事が並んでいる。

会話は一切ない。


いつも通り変わり映えのない腐った朝だ。



「ごちそうさま。」



美味しいはずの料理もこの腐った家のせいで食べる気がしない。





私は足早に部屋に戻った。