改めて自分が世間知らずなのだと知った。


まさか猫が喋るなんて…


この澄んだ星空の下、私は死のうとした。

だけどそこに突然ソレは現れた。



「考え事に耽っておられる所申し訳ない。」


死ぬのを諦めて部屋に戻った私の右手にザラッとした舌の感触が走った。


「ひゃっ!くすぐったい。」



思わず手がビクッとなる。


「おっと失礼。それほど驚かれるとは。」


「ご、ごめんなさい。」


「謝るのは私の方です。さて、今夜はそろそろ帰らさせていただきます。」

背中を丸めて伸びたと思うと、もう向こう側の窓枠に飛び移っていた。


「明日また来てもよろしいかな?」


「え!?あ、うん。」

声が裏がえる。


「ふふ、やはりあなたは可笑しな御方だ。」

クルッと体を返す。

「おっと言い忘れていました。」

再び黄金色の眼を私に向ける。


「こんな高さでは痛いだけですよ。とても死にきれません。」


不敵な笑みを浮かべ、ソレは闇夜に溶けていった。