「ジャズ…」


私はその言葉を呟く。




「お嬢ちゃん、知らないだろう?」



体型の良い男の人は向の席に腰をおろす。



「今日初めて聴きました。」






「いい曲だろ?」




「はい、とても優しく感じます。」



「そりゃ良かった。親父も喜んでるよ。」



男の人は歯を見せて豪快に笑いながら席を立つ。




「ま、ゆっくりしていきな。」



そう言い店の奥へと入って行った。