「そこのお嬢ちゃん。」



後ろから大きな声で呼び止められて小さな叫び声が出てしまった。

バッグの中からこちらを覗くクロはその反応にニヤニヤしている…




「私…ですか?」



「そうだよ。お嬢ちゃんの事だよ。」


「まだ昼食べてないだろ?」



確かにまだ食べていない。朝を食べてから随分と時間が経ったし、ここまで歩いてきたからお腹はペコペコだ。


「食べてないですけど…あまりお金を持ってなくて…」


事実家を飛び出してきたときにお金は殆ど置いてきてしまった。


「はっはっは、そんなことなら心配ない。賄いってことで食わしてやるから。」



「そんな…悪いですよ。」


「いいっていいって。食った後皿洗ってくれるなら何にも心配ねぇ!!」

強引に腕を引っ張られて私は店に入った。