こんなに草木が生い茂った森がこの街にあったなんて知らなかった。


知らなくて当然…か。



かれこれ一時間程、クロと私は歩いている。
もう私の家は見えない。



不確かだった気持ちが徐々に実感のある確かなものへ移りつつある。



私は…自由だ。




「もう少しですので、お疲れのようですが暫し我慢してください。」





「私は平気。それよりクロ顔色悪いよ。」





「そろそろ…ですね。」





そろそろ?




「少し急ぎます。付いて来て下さい。」




「ちょっ、待ってよ。」



闇の中をクロだけを頼りに進む。

更に森は深くなる。
…灯り?


「…ここは?」


「着きました。ここが…私の…」


「クロ?クロ!?」