「早くしないと騒ぎを察して誰かが起きてしまいます。」


起きた出来事を処理しきれていない私をクロが急かす。




「説明…してよね?」




「もちろん。聞きたくなくともこの姿を見られたからには聞いてもらいますよ。」



クロは微笑む。






「きゃっ!」


不意に体が軽くなる。
抱き抱えられている。



「離さないでくださいよ、飛び降ります。」




は?ここから!?



「ちょっと待ってよ!心の準備が…」


「ではこのままずっと塀の中で生きて行きますか?」




「それだけは嫌っ!」




「私を…信じてください。」







「…分かった。信じる。」



「あなたはやはり可笑しくて素敵な御方だ。」






体が浮く。内側からこみ上げてくるものをグッと我慢する。


体に衝撃が走る。




「ようこそ外の世界へ。」


私は初めて土に足を着けるという感触を覚えた。
これが…外なんだ。