「待っていたわ。」



「私をですか?」


クロは不思議そうな顔でキョトンとしている。




「私…変わりたい。」




心から絞り出した声は微かに震えた。





クロは黙ってジッと私を見つめている。






「今まで私は何もしないまま生きてきた…」





熱いものが目頭にこみ上げる。





「あなた言ったわよね?私が少し動いてあげれば景色は変わるって。」




「私はまだ死にたくない。だから…」




「…助けてっ」





「よく言いました。」





涙で滲んだ眼でも分かるほど大きな笑顔でクロが微笑む。





「あなたはこんなところで死ぬべきではない。」




零れる涙をクロはペロッと舐める。






「私があなたを連れ出しましょう。」


「代わりに…一つだけ約束を守れますか?」

「…なに?」

「私は黒猫であり黒猫じゃない。これから見せる姿が私の本当の姿です…」