「…様、お嬢様!」

壊れんばかりに扉を叩く音でようやく我に帰った。

「な、何よ!?」


「それは我々の台詞です!何度呼び掛けても応じてくれないではありませんか。」



こんなにも万華鏡というものが魅力的だとは思わなかった。

クロがいなくなってからずっと万華鏡を見ていた。
使用人の呼び掛けにも気付かずに。



「一体何をなされてたのですか!?」



言葉に詰まる。


「体調悪くて寝てたのよ。」


なんとも解りやすい嘘だ。


「風邪でも拗らせましたか?」


「うん、でも大丈夫。」



この数日の出来事を話したところで理解できるはずもない。



…いつものように一日が始まる。