「覗いて御覧なさい。」


「万華鏡というものは覗くものなの?」

私は左手に万華鏡を転がしながら問う。


「いかにも、きっと驚かれるはずです。」


私はそっと左目に万華鏡をあてた。

「すごい、何これ!?」


私は心底驚いた。


「驚くのはまだ早いですよ。さあ、万華鏡を回して御覧なさい。」



…涙で景色が滲む。



「うっ、ううっ。」


それは大層綺麗なものだった。夜空に浮かぶ星に引けを取らない程に。


「あなたは世界を知らなさすぎる。」

黒猫はそっと言う。


「あなたが少し動いてあげれば、見える景色は変わりますよ。その万華鏡のようにね。」



ボロボロと涙が零れる。

「…ありがとう。クロ。」

とっさに出たのは名前だった。


「ふふっ、素敵な名前をいただきました。」



世界は美しい…



少しだけ分かったかもしれない。