また一日が終わる。


時間通りに夕食を食べ、時間通りに入浴し、
そして眠る。



窓の外には満月が覗いている。夜風は夏の割に
ヒンヤリとしている。



「…ン、リン、シャリン」

微かに鈴の音が聞こえる。その音は次第に大きなものとなる。



「こんばんは、素敵なお嬢さん。」



「いつからそこに!?」


鈴の音色に耳をとられている内に黒猫はそこにいた。


「私は黒猫ですよ。足音を消すことぐらい容易い事です。」



口元をクッと上げて微笑む。


「わざわざ足音を消すのね。」


「そうしなければ人間に見つかってしまいますから。」


「私だって人間よ?」


「ふふっ、確かに。」


「あなたは私を見て何を感じましたか?」


答えがなかなか出ない。

「…最初はすごく怖かった。だって喋るんだもの。」


「ふふっ、違いありません。やはりあなたは可笑しな御方だ。」


「喋る事を気にすることがそんなに可笑しいの?」

「いいえ、普通人間は私の事を悪魔の使者だの不吉だのと決めつけます。でもあなたは違う。」



黄金色の眼が優しく光る。