君のちょこは、もうない。


「まーかべっ!」

3ヶ月前のある日の放課後、あたしは、まるでとても仲のいい友達を誘っているくらいにそれが当然であるかのように、近藤に誘い出された。

「ゴミ捨て行こうぜ!」

えっ、なんであたしが、と思ったけど、他にすることもなく、あとは帰るだけだったので、仕方なく付き合うことにした。

そのときのあたしにとって近藤は、他のひとたちと同じで「少し変わったひと」という存在でしかなかった。

偏見は持たないようにしているし、何より近藤は興味があるという意味でおもしろいので、ときどきしゃべったりはしていたけど、まさかゴミ捨てに付き合わされるほどの間柄だという自覚はなかった。

だから驚いたし、近藤の考えていることがちっともわからないと思った。

でも、考えていることがわかったら、それ、近藤じゃないし。

とも思った。



横に並んで歩きはじめたものの、近藤はゴミ袋をどすんどすん蹴りながら歩くだけで何もしゃべらないので、あたしから話しかけた。

「べつに、ゴミ捨てくらいひとりで行ったらよかったんじゃない?」

あ、ちょっと今冷たい言い方だったかなーと思いちらっと横を見ると、近藤は全然気にする様子もなく笑って、

「つれないこと言うなって!俺はね、お前のことが好きなの」と言った。

「ふうん」脈絡ない会話だなあとか思いながら答えると、

「えっ!!反応それだけかよ!ひとが、こっ告白してるのに?」

長い前髪の間から、小動物みたいなぐりぐりした目が驚いたようにあたしを見た。



「えっ、告白だったの?今の」

「そーだよー!気づかなかったのかよー。真壁、お前変なやつだな」

そう言って、何が楽しいのかケタケタ笑う。それが彼なりの照れ隠しだと知るのはもっと後のことだ。

言われていることの意味をようやく理解しながら、あたしは急にドキドキしだした。