由貴くんのお家について………部屋に入ると、由貴くんは……



「昨日はいきなりごめん……。」



と、また謝った。



だからあたしはううん…と笑顔で首を振った。





「少し前に………やっと父親が…認めてくれる条件として、ドイツでの医学留学を出してきた。……多分、諦めさせるつもりの条件なんだろうけど……。俺は諦めるつもりないから。」



由貴くんは真っ直ぐに前を見つめていて、その決意が固いことをあたしはひしひしと感じた。



ドイツでの医学留学は生半可な気持ちでは出来ない厳しいものらしい………。



専門医になるために最短で6年間の研修期間……。
その間、ドイツの医学部は教養課程においてものすごく厳しいらしくて……遊ぶ暇はもちろん、バイトなんかもしてられないほど………。
その後は日本で医者になるために国家試験の受け直しも必要なんだと由貴くんは言った。



それでも、医者になるために由貴くんはその厳しい世界に進むんだ……。



由貴くんの……夢、なんだね………。



いつでも真っ直ぐで誠実な君らしい選択だって……あたしは思った。



初めから………あたしの中には一つしか答えはないんだよ。



顔を上げて、ゆっくりと由貴くんの瞳を見つめた。



「…………っ。」



由貴くんの真っ直ぐな瞳が…一瞬、揺れた。