かけられた声に、ゆっくりと後ろを振り返った。
相変わらずの人懐こい笑顔で俺を見つめる……一条先生。
俺の苦手なこの人。
「………あるでしょ?………さぁ、行こうか……。」
「…………。」
なにもかもわかっているような…その言い方に腹が立つ。
でも……黙って後につづいた。
「………どうぞ~。」
第二資料室の扉を開けた一条先生に促され、中に入った。
「………君………本当に彼女のこと、信じられる?」
「…………意味がわかりません。」
唐突なそのセリフに眉間にしわが寄った。
あの聖女の人といい…最近の教育実習生は遠慮って言葉を知らないらしい。
「昨日、来たんだよね~…。ここに。百合花……聖女の教育実習生、俺の知り合いでさぁ……彼女に紹介してほしいって頼んで…君の彼女の方がね?」
「………。」
すらすらとそう喋り始めた一条先生……。
本当に……全くもって意味がわからない。
「………そしたら、会うなりいきなり抱きつかれて……まさか、シャツのボタンまで取るなんか…驚いたよ?」
「………っ!」
そのあんまりな言葉に……俺は思わずポケットの青いボタンを握りしめていた…………。


