楡崎先生はあたしの言葉にちょっと驚いたように眉を上げたけど……次の瞬間にはひどく面白そうな顔で笑った。
「………じゃあ、どうして彼のネクタイはなかったのかしら?」
「…………え……。」
由貴くんのネクタイ…………どうして……知ってるの………?
「…………抱き締められた時に……私の口紅がついたの………。」
「…………!!」
ごめんなさいね…?…楡崎先生はそう言ってまた……笑った。
「………っ…ふ……っ」
限界だった………。
なかったネクタイ……香水の残り香………。
ポロポロと……呆然とするあたしの瞳から涙がこぼれ落ちて……止まらなかった。
「…………。」
背後では……満足そうな顔であたしを見てる楡崎先生がいるとも知らずに…………。


