重厚な緑の校門に、白く輝く立派な校舎。じゅうぶんに整った各設備。
ここはボク…藍原 かなめが通うことになる某私立大学付属の高校だ。

まだ入学したばかりのボクは、地図を見ながらも迷子になってしまっていた。
そもそも、高校にしては敷地が広すぎると思うんだけど…。

うんうん唸りながら、教室棟への道を探していると、優しい先輩が声をかけてくれた。

「おはよう。君、新入生だね?」

スラリと伸びた長身は、190cmは確実にある…お人好しそうな柔らかな笑みに、一瞬、焦がれるような思いを抱いた。

(ボクってば……人の好意をなんだと勘違いしてるんだか……)

「君…?」

「……あ…ごめんなさい!あの…教室棟ってどこでしょう?」

「やっぱり迷子か~(笑)
案内してあげるよ、ついてきて」

「えへへ、ありがとうございます」

見とれてしまったのを悟られぬように、ボクは慌てて作り笑いで繕う。
名前も知らない先輩は、やはりにこやかに案内してくれた。



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