『ヒ・ン・ちゃーん。数学教えて〜』

「ほいほい。で、どこがわからんー?」




右手に数学の問題集を持ち、向かいの席にスタンバって親切丁寧に教え出す。

そんな彼女を遠巻きに眺めるクラスメートたち。


『ヒンってさー、何か…親切だよなぁ』

『あー。この殺伐とした学園で珍しいよなあ』


そう。
金持ち学校の特徴として、顕著な階級がある。

特に一組の生徒は家柄も最高クラスゆえに自尊心が高い。自尊心の塊といっても過言ではない。


二組以降は一組までではないにしても、やはり金持ち。それなりに高い。


そして六組は、一番庶民近くはある。
しかし近いからこそ、バカにされることも多い彼らは六クラスで一番すさんでもいる。


彼女は高等部からの外部入学生。それだけでも目立つのに、加えて庶民。
当初、彼女は当然の様にバカにされていたのだが。



「お見事!さすがッス、サキちゃん!」


我が事の様に喜ぶ彼女。


『ヒン見てるとさぁ…和むよな』

『わかる…。ヒンに言われたら、何でも言うこときいちゃうよなー…』


入学当初の風当たりはどこへやら。

彼女は愛されていた。