ゆったりとした黒のロングドレスに黒いレースのケープを羽織っているので、白い肌がよりいっそうなまめかしく映った。

「ふんっ、何の用だい?まさか、ツーレイアのどん詰まりから皮肉を言いに来ただけじゃないだろうね。これからちょっと師弟の間で大事な話があるんだ。出てってもらえないかしら」

 ゆっくりと女主人に振り向いて紅は言った。小振りの鍔無し帽からはみでた長い真紅の髪が流れるように棚引く。

「まったく、あんたたち二人を見てると飽きないねぇ、ほんと、お似合いなんだけど」

「何が言いたいんだい」

 真紅の柳眉が吊り上がる。

「まぁ、そんなに怒りなさんなって。今日はね、仕事を頼みに来たのさ」

「えっ?仕事ですか!」

 仕事と聞いただけで、カムランは喜々とした声を上げた。

「そう、仕事。なにやら最近、あんたたちの経済状況がよろしくなさそうだから、困ってると思ってね、おいしい話を持って来てあげたわけ」

「べ、別に困ってるわけじゃないわよ」

「でも仕事断ってるんで家計が厳しいんじゃない?」

「わたしがやるような仕事じゃないから断わってるだけよ」

「そうなんですよ。師匠ったら、来る仕事全部勝手に断わっちゃうんです。そのくせ金遣いは荒いでしょ。おかげで家計は火の車ですよ」

「カムラン!あんたねぇ」

「まあまあ、お二人さん、落ち着いて。で、どうする、紅。あたしの持って来た仕事してみるかい」

「仕事の内容によるね」

「師匠、またそんなことを」