タモの結界を刀で薙ぎ払って現れた者は、中肉中背の男だった。

 その背後に二人。

 いずれも黒装束に白い頭巾。

 顔に表情はなく、額にジパドの紋章である大きな一つ目の刺青が施されていた。

 ジパドの僧兵だ。

 現れていきなり紅に切り付けて来た。

 大きく横に薙ぎ払われた刀の軌跡が紅の胴を捕らえる。

 刃が滑らかな斬撃となって紅を両断した。ジパドの男は確かな手応えに満足する。

 だが、紅はまだ目の前に立っていた。

 男に挑戦的な笑みを浮かべている。

 鋭い眼光を称えたブラウンアイ、筆で書かれたかのようにはっきりとした柳眉、高い鼻梁に鋭角的な鼻先。薄めの唇は口紅を着けていないのに新鮮な血潮のように真っ赤だ。癖の無い真っ直ぐな長い赤毛を草色の鍔無し帽で抑えている。

「わたしがそんなもので斬れると思っているの」

 男はそう言った紅を無表情のままさらに斬り付けた。

 今度は袈裟掛けに、紅の左鎖骨から胸、鳩尾、右脇腹へ刀が潜り込む。