ただ風のように



昇降口まで走っていくと遊汰先輩はもうそこにいて携帯をいじっていた。


「すいません。遅れました」


私は急いで謝った。


「大丈夫。気にしなくていいよ」


「ありがとうございます」


「いいえ」


微妙な沈黙が流れた。ほんの数秒がすごく気まずい時間だった。


「……あの遊汰先輩、私に何か話があるんですよね?」


「うん、あるよ。夏々海ちゃんも俺に何か聞きたいことあるよね?」


「……はい」


「海頼のこと?」


「……おかしいですよねっ。今日、逢ったばかりなのに気になるなんて」


私は恥ずかしい気持ちを隠そうと一気にまくしたてた。


「おかしくはないでしょ。よく分からない人のことを知りたいと思うのは当たり前じゃない?」


遊汰先輩は諭すように優しく言ってくれた。