ただ風のように



「……そんなに上手なのに推薦来なかったの?」


「え?」


突然の質問に私は聞き返した。


「女子で男子相手にしかも一年で通用する力持ってるのに強い学校から推薦来なかったの?」


「私、中学のときは試合出たことないんですよ」


「そうなんだ。俺と一緒だね」


「先輩もですか?」


意外な返事に私を先輩の方に体を向けて聞いた。


「うん。ちゃんとしたバスケは高校からなんだ」


「そうなんですか」


先輩の目を見たらこれ以上、聞いちゃいけない気がした。


「君は?どうして中学のとき、試合出なかったの?」


「えっと、なんていうか、その……」


「こらっ。海頼!!練習抜けて、夏々海のこと口説いてんじゃないよ!!」


「口説いてないですよ!!」


急にコーチが現れて、海頼先輩の頭を小突いた。


「え?じゃあ、夏々海が海頼を口説いてたの?」


「それも違いますよ!!ってか、男女が一緒にいたら口説いてるって勘違い、やめてくださいよ!!」


海頼先輩が必死になって否定しているのが、なんだかとても可愛かった。