ただ風のように



私は言われた通りに先輩の隣に腰を下ろした。


「長袖、暑くないの?」


海頼先輩は私を見て、不思議そうに聞いてきた。


「暑くないですよ。先輩こそ半袖とリストバンドだけで寒くないんですか?」


「動くと暑くなるからね。今日は気温も高いし」


「確かに暖かいですね。ポカポカします」


「そうだねぇ」


海頼先輩はそう言って少し笑った。


「私、なんか言いました?」


「うん。ポカポカって言い方がなんかツボだった」


「普通にポカポカって言いませんか?」


「言うけど、君が言ったからかな?しっかりしてそうだからそういう言い回しはしないと思ったんだ」


「そうですか?でもしっかりしてそうって言われたのははじめてで、なんか嬉しいです」


「良かった良かった」


そこからしばらく沈黙が続いた。さっきのような気まずい感じではなく、なんとなく心地いい沈黙だった。