ただ風のように



「そうだ、夏々海。合宿はあるの?」


翔くんが私に聞いた。


「うん。8月5日から8日の4日間、西高と合同でやるの」


「そうなんだ。そういえば夏々海の彼氏って西高の主将なんだよな。夏々海は青藍の主将だしお互いに高めあえるんだな」


「そうだよなぁ。夏々海は2年なのに主将だもんなぁ。俺なんか3年のときに副主将だったのにすごいよなぁ」


翔くんと空くんは関心したようにそう言った。


「そんなにすごくないよ。先輩たちが何事も経験だからってやらせてもらってるだけだし、試合とかだと先輩たちのほうがすごい動けてるもん」


「でも、そんなすごい先輩たちから主将をまかされたんだろ?そこは自信持ってもいいじゃん」


空くんは私の顔を覗き込むようにして優しく言ってくれた。


「そうだぞ、夏々海。自信と勇気を持つことでできることがいっぱいあるんだ。夏々海は優しさがあるんだから、あとは自信と勇気を持つことで今よりもっとたくさんのことが良い方向に向かっていくぞ」


お父さんは私の目を見て強く言った。


「父さんもな今は外科医として医者をやっているけど、お祖父さんにすごい反対されたんだ。医者にならずに普通の会社に就職しろって言われてなぁ。だけど、どうしても父さんは医者になりたくてお祖父さんに『どうしても医者になりたいんです。医大に通わせてください』って言ったんだ。あの時のお祖父さんはすごく怖くて勇気を持って覚悟してお願いしたら通わせてくれた。だから、夏々海はもっと自信と勇気を持って行動したらいい」


お父さんにそんな過去があるのを私たち兄妹は始めて知った。


「お父さん。私、頑張るね。本当にありがとう」


私はお父さんに笑顔でお礼を言った。お父さんはそれを見てニコッと笑い、またご飯を食べ始めた。