ただ風のように



「おぉ、夏々海。彼氏と帰ってきたんだって?」


「お父さん、お帰り。空くんから聞いたんでしょ?」


私はリビングに入るなりお父さんに茶化された。


「なんで俺って分かるんだよ?」


「だって翔くんが言うはずないもん。空くんしか言う人いないじゃない」


「ははは。空はなんでもすぐ言うからなぁ。空に秘密は話せないな」


「兄貴までそういうこと言うのかよ?まぁ言いけどさぁ」


空くんは口をとがらせてそう言った。


「空は正直者だから隠し事は出来ないんだろう。これは空の長所だよ」


「父さんだけが俺の味方だよ」


「あはは。家族はみんな家族の味方だよ、空」


「お父さん、ご飯ですから子どもたちを早く座らせてください」


私たちが楽しく話しているところにお母さんが声をかけた。私はあの日以来、お母さんの手伝いができなくなっていた。手伝いたくてもお母さんがそばによることを許してくれないからだ。


「あぁ。さ、みんなご飯だから席に着きなさい」


お父さんの一言で私たちは席に着いた。お母さんは私たちの前に料理を置いていった。今夜のメニューはハンバーグだ。


「じゃあ、食べようか。いただきます」


お父さんが声をかけて私たちはご飯を食べ始めた。