ただ風のように



「じゃあ、始めるよ」


その言葉と同時に涼太朗先輩の目付きが変わった。さっきまでの優しい目から攻撃的な目になった。


私は腰を落とし、ハンズアップで涼太朗先輩の動きを待った。


次の瞬間、涼太朗先輩は一瞬だけフェイクを入れて切り込んできた。背の高い先輩に中に入られたら確実に負ける。


私は先輩の進行方向に垂直になるように入り込み、ボールをカットした。


「!!!!」


体育館がどよめいた。


「すごいね、夏々海ちゃん」


涼太朗先輩が声をかけてくれた。


「あの、まぐれです。私の方が身長低いから、カットできる確率高かっただけです」


「それでも男子からボールを取ったんだから、自信持っていいと思うよ」


遊汰先輩が笑顔でコートに入ってきた。手には女子用のボールがあった。