ただ風のように



「着いたね」


「着いちゃいましたね」


「ふふっ。俺ら前にもこんなやりとりしたよね」


先輩は笑いながら言った。


「そうですね」


私も笑顔で返した。


「夏々海?」


私は誰かに名前を呼ばれて振り返った。


「翔くん。おかえり、早かったね」


そこにいたのは翔くんだった。


「夏々海がこの時間に帰ってくるなんて珍しいな。ん?その人は?」


翔くんは海頼先輩を見て聞いた。


「西高バスケ部の安西海頼先輩」


「あぁ。海頼くんね。夏々海の一番上の兄の翔です。あの時は夏々海がお世話になりました。本当にありがとう」


「あ、電話で話した夏々海さんのお兄さんですね。夏々海さんにはお世話になっています」