ただ風のように



「母さん、夏々海のこと送ってくるから」


リビングにいる先輩のお母さんに挨拶して渚さんにからかわれながら私達は外に出た。


「本当に良いんですか?」


「良い。女の子1人で帰す方が俺は嫌だよ。そんなに気を使わなくてもいいんだよ?」


先輩は歩き出しながら私にそう言った。


「でも……」


「本当のこと話した相手に気を使われたら、君はどう思う?」


「哀しいです」


「うん、そうだよね。だから俺は君には気を使わない。だから君も俺に気を使うのは無しね」


「はい、分かりました」


少しおどけた様に言った先輩に感謝しながら私は笑顔で答えた。