ただ風のように



「もう5時か。時間大丈夫?」


話が一段落したところで先輩が時計を見て聞いてきた。


「兄に何も言わないで出てきたので、そろそろ帰ります。先輩と話できて良かったです」


私は立ち上がり頭を下げた。


「バイクで家まで送るよ」


「大丈夫ですよ?まだまだ明るいし歩いて30分くらいの距離ですから。それに先輩、無免じゃないですか」


私は苦笑いしながら断った。


「いや、30分もあるなら心配。歩きで家まで送らして。歩きなら問題ないでしょ?」


「でも先輩は往復で1時間かかるじゃないですか。そんなの申し訳ないです」


「つまんないこと気にしなくていいから。ほら、行くよ?」


先輩は半ば強引ぎみに私の腕を引っ張り部屋を後にした。