ただ風のように



「じゃあ4歳くらいからボールに触ってたんだ」


「触ってるだけでしたけどね。その頃の自分にとってはボールはすごく大きかったので。両手でなんとか抱えてる感じでした」


私は苦笑しながら答えた。


「そうなんだ。バスケみたいなことして遊ぶって具体的には?」


「えっと兄がボールを持ってフットワークの練習してるのを真似してみたりハンドリング教わったりしてました」


「ハンドリングやってみせて?」


海頼先輩のリクエストで私はボールを借りてやってみせた。


「上手くないと思いますよ?」


そう前置きしてから手のひらで回転させたり後ろから投げてキャッチしたりいろいろやってみた。


「男子用のボールでそこまでできれば上等だよ。男子と1on1やってみる?」


海頼先輩が優しく言った。


「いいんですか?」


私は嬉しくなって勢いよく遊汰先輩に聞いた。


「コーチがOKだせばいいよ。聞いてくるから待ってて」


そう言って遊汰先輩はコーチの元に走っていった。