ただ風のように



「夏々海さん。これをやろう」


お爺さんは部屋を出ていったと思うとすぐに戻ってきて私にそう言った。


「何ですか?」


「手を出しなさい」


私は言われたままに両手をお爺さんの前に出した。お爺さんは海頼先輩が持っていた袋と色違いの袋を私の手のなかに置いた。


「開けてみれば?」


海頼先輩にそう言われて袋の中に入っていたものを取り出すと明るい黄色の石が入っていた。


「……綺麗な石……」


「その石は蛍石と言うてな、横文字ではイエローフローライトと言うんじゃ。その石は精神的、肉体的な疲れを取り去ってくれる。目覚めの石とも言われておる。2月26日の誕生石じゃ」


「2月26日って私の誕生日」


「そうじゃよ。お主の生まれた日の石の言葉は柔らかな微笑みじゃ」


「夏々海さんにピッタリの言葉ね。蛍石は太陽のような暖かい色合いを持っているのよ」


お爺さんとお婆さんが優しく暖かい笑顔で言ってくれた。